Secondary School attached to the Faculty of Education, the University of Tokyo

【行事報告】卒業式

 去る3月16日(木)に、令和4年度卒業式を挙行しました。昨年度は卒業生とその保護者のみで行いましたが、今年度は在校生(5年)の参加と管弦楽部の演奏で72回生を送り出すことができました。

 
学校長の言葉
 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様には、心からお慶びを申し上げます。また、ご来賓の皆さま方には、ご多忙中にもかかわらず、本校の卒業証書授与式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 今年は5年生の皆さんも式典に参加し、管弦楽部の演奏も久しぶりに復活したことからもお分かりのとおり、3年間続いたコロナ禍も、予断は許しませんが、ようやく一段落しようとしています。72回生の皆さんは、後期課程の3年間、学校生活・社会生活上の様々な制限もあり、困難や不安も多かったとは思いますが、弛まぬ熱意と努力でそれらを乗り越え本日無事卒業できました。まずはこのことに、教職員一同深い敬意を表します。
 コロナ禍では、ソーシャルディスタンスが重要ということで、人と人との距離も広がりました。そのことで、皆さんもそうでしょうが、私達にとっても「仲間とのつながり」の大切さが身に染みて分かりました。本校の教育の特色である協働的な学びの体験が、本来の意図とは少し異なりますが、その距離を少しでも縮めることに貢献できたとしたら、大変喜ばしく思います。また、その過程で得た友達や先生方とのつながりを今後とも大切にして行って欲しいと思います。
 皆さんは、これも本校の特色である主体的・探究的な学びを通して、課題を見出し、知識を深め、それを解決して行くことを学んできました。扱った課題や探究の方法は限られたものかも知れませんが、ご心配なく。皆さんはこれから新たな課題探しの旅に出ることになります。そしてそれは生涯続くものです。是非、生涯にわたり学び、探究を続けて欲しいと思います。
 協働的で主体的・探究的な学びの「先」にあるものは何でしょうか。それは目標や課題の価値(何が重要か)を見出すことだと私は考えます。例えば、国連の持続可能な開発目標(いわゆるSDGs)を見ても、どれも重要な目標であり課題ですが、一度に全てを達成したり解決することはできません。従って、それぞれの価値を定めることによって、目標の選択や課題解決の方向性を定める必要があります。ただし、価値というものは、必ずしも普遍的とは言えず、人それぞれの主観と関係しています。その中でどのように方向性を定めて行くかという点に関して近年、国際的にも「ウェルビーイング」に価値を求めるといったことに注目が集まっています。我が国でも、現在進行中の第6期科学技術・イノベーション基本計画において、我が国が目指すべき未来社会像として、持続可能性と強靱性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、「一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」を挙げています。
 ウェルビーイングというのは、個人が、つまり一人ひとりが、健康的で満足のいく生活を送るための「総合的な状態や感覚」を表す言葉です。具体的には、身体的、精神的、社会的な健康の面から、自分自身や周囲の人々、そして社会全体に対して「満足している」と感じる状態を指します。こういった、一人ひとりの「総合的価値」を見出し、それを高めるように行動の意思決定をしていくことがこれから求められているのだと思います。
 まとめます。3つのことをお話ししました。一つは「人とのつながりを大切に」、二つ目は「生涯に亘り学び、探究を」、そして三つめは「ウェルビーイングを大切に」、これらを念頭に自分自身と周囲の人々の「幸福を追求」してください。その上で、皆さんの今後のますますのご活躍を心より祈念して、はなむけの言葉とさせていただきます。

学校長 山本義春

 
副学長の言葉
 東京大学教育学部附属中等教育学校の卒業生並びに保護者・ご家族の皆さま、このたびはご卒業まことにおめでとうございます。皆さんが後期生になる年度始めより新型コロナウイルスが我が国でも蔓延し、それ以来三年間、皆さんは特別な環境のもとで高校生活を過ごすこととなりました。それらを乗り越え、これから次の新たな一歩を踏み出される皆さんに、心からお祝いを申し上げます。そして今日まで卒業生の成長を見守られてきた保護者・ご家族の皆さま、これまでのご苦労に敬意を表するとともに、お慶びを申し上げます。
 東京大学は2027年に創立150周年を迎えますが、創立の前年である1876年(明治9年)以来、一世紀半にわたって我が国では20歳が成人とされてきました。その法律が、昨年4月に改められ、成人年齢が18歳に引き下げられました。つまり、皆さんは、この春からは成人として社会に出ることになります。飲酒・喫煙などの禁止はこれまでと同様ですが、成人として社会に出るという大きなステップを踏むにあたり、悪質な勧誘や違法な儲け話など、トラブルに巻き込まれる危険性も高くなります。皆さんには、成人としての責任を自覚し、よく考え、よく調べ、信頼できる人に相談するなど、適切な行動を心がけることが求められます。
 本日、皆さんは卒業式という節目を迎えました。卒業に際し、私から3つのことをお伝えしたいと思います。まず1つ目です。これから大学や専門学校に進学される皆さんは、今までとは異なる様々な経験を積むことになると思います。小学校を卒業し、この六年間皆さんが受けてきた教育は中等教育、そこでは皆さんは「生徒」と呼ばれてきました。私は大学の教員として、教育と研究に携わっておりますが、大学での教育は高等教育、その対象は「学生」と呼ばれます。生徒と学生は何が違うのでしょうか?これまで教室で授業を受けることが基本であったと思います。これからは、講義や実習、演習など、選択の幅も大きく広がります。講義の内容には、教科書がまだないような最先端の話題も含まれます。授業で「教わる」から、自ら「学ぶ」にマインドセットを切り替えることが、生徒から学生に切り替わる重要なポイントであると考えます。
 2つ目は1つ目にも関係します。大学の中だけではなく、皆さんは様々な場面で、選択をする機会は益々増えてくると思います。是非その場合に、今の自分を起点として選択、これをFore Castingと呼びますが、これだけではなく、ありたい未来の自分を実現するための視点、すなわちBack Castingをすることを心がけていただきたいと思います。
 3つ目の話題です。新型コロナ感染症の問題、気候変動や資源・エネルギーの枯渇の問題など、現在、国際的に人類が知恵を集め、力を合わせて解決していかなければならない課題が山積しています。また今後、更に複雑な問題に直面することがあるかもしれません。是非、若い皆さんの貢献が大きく期待されています。世界はつながっています。そのため、様々な場面で日本語のみならず、外国語での交流が不可欠になります。多くの皆さんはこれまで英語を学んできたものと思います。日本で学んだ若者は非常に高い英語力をもちながら、会話の経験が十分ではないために交流の場で力が発揮できないことが少なくないように感じています。卒業後には授業で学ぶことに加えて、そういった国際的な交流の場に是非積極的に参加し、外国語での交流の経験を積み、未来の活躍の可能性を広げていただければと思います。
 卒業式を迎えた皆さんには、明るく希望に満ちた未来が待っています。簡単な道ではありませんが、これまでに誰も経験したことがないパンデミックの中で高校生活を経験したみなさんであれば、必ずやそうした困難を乗り越えて成長していけるものと信じています。
 最後に、卒業生の皆さんへ、心からの祝福とエールを贈り、お祝いの言葉といたします。本日はご卒業、誠におめでとうございます。
東京大学理事・副学長 大久保達也

 

学部長の言葉
 教育学部長の小玉です。卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。東京大学教育学部を代表して、心からお祝い申し上げます。また、ご家族のみなさまにおかれましても、このたびは本当におめでとうございます。
 皆さんは本日、七二回生として本校を卒業されます。今から六年前、二〇一七年四月に皆さんが本校に入学されたときも、私は入学式で祝辞を述べさせていただきましたので、入学式でお会いした皆さんに、六年後の卒業のお祝いを述べる機会を得たということに、私自身、とても感慨深いものがあります。当時の入学式の祝辞の原稿を見返してみたのですが、そこで私は皆さんに、「好奇心の扉を開いてみて欲しい」という話をしていました。皆さんはこの六年間で、知的好奇心の扉を開くことができたでしょうか?
 七二回生の皆さんの本校での活動については、私自身陰ながら、公開研究会や日々の授業、あるいは生徒会活動、銀杏祭、芸術祭等の場で拝見させていただき、時には外部の活動にも一緒に参加したりしてきました。その中で、皆さんの研究の成果や日々の発言から多くの刺激を受けてきました。そうした様々な活動のなかで、七二回生の皆さんはそれぞれに、東大附属での六年間を通じて、豊かな知的好奇心の扉を開くことができたのではないかと確信しています。
 ただ、これから皆さんが様々な進路を歩んでいく中で、東大附属で培った好奇心や問題関心を熟成させ、発展させていくことができるかどうかという点については、おそらく様々な壁や課題に直面することになるのではないかと思います。その時に、突き当たった壁や困難を前にしてそれに屈するというか、従うという場面ももしかしたらあるのかも知れません。しかし、それを変えていくという道もあることを、気に留めておいてほしいと思います。
 みなさんは高校3年生で成人をした初めての学年でもあります。私は昨年の一月に、これから成人する七二回生の皆さんに、「18歳で成人することについて」という話しをさせていただく機会がありました。その時にも話した点ですが、家庭や学校による保護の枠組みから抜け出て成人として自立していくということは、社会と直面したときに、そこに主体的に参画をし、その社会を変革する市民になるということでもあります。東大附属で培った豊かな好奇心や問題関心は時として、今の社会で支配的な価値観やマジョリティの思想と対立したり緊張関係に立ったりすることもあるかも知れません。あるいは、社会の側は皆さんに社会の支配的な規範への従属を求め、飼い慣らすために様々な誘惑の手をさしのべてくることもあるかも知れません。そのときに、みなさんは安易にそれに服するのではなく、そこと批判的に向き合いつつ、それを変えていくことのできる飼い慣らされない市民になっていくこともまた、東大附属で探究的市民として学んだ皆さんがとりうる一つの選択肢ではないかと思います。
 そうした選択肢を視野に入れながら、皆さんがそれぞれの夢を実現するために羽ばたいていってほしいということを切に願い、私からの祝辞といたします。本日はおめでとうございました。
 教育学部長 小玉重夫

 

PTA会長の言葉
 卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。今年は東京のソメイヨシノが14日に開花し新しい門出に花を添えております。また、保護者の皆さまにおかれましても今日のこの日を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。
 6年間の永きに渡りPTAの活動に対し、ご理解とご協力を頂きありがとうございました。 生徒たちを想い、一緒に悩み、喜び、この、6年間の中には様々なご苦労と、大きな感動があったことと思います。また、先生のみなさま方も、今日まで生徒たちを全力でご指導、支えていただき心から感謝申し上げます。大きな世の中の変化もありました。2019年12月, 世界的な流行となったコロナウィルス。新しい生活様式を強いられる3年間となりました。思い通りにならない不自由さや不安と戦う日々に、学校も保護者も生徒も一丸となって現実に対峙してきたと思います。その経験は必ず今後の人生における生きる力となるでしょう。
 また、2022年4月から、成年年齢が、20歳から18歳に引き下げられました。投票権や国家試験の取得、親の同意がなくても契約できる等、大人として扱われるようになりました。高校生でありながらも社会との接点も身近になり、正しい知識も必要になってきました。このように時代が大きく変わろうとしている真っ只中を皆さんは生きています。時には壁にぶつかることもあるでしょう。そんな時は東大附属での事を思い出して、置かれた状況の中で何ができるのかを自ら考え、行動していってほしいと思います。皆さんにはその力が備わっているはずです。そして世の中の変化を感じ取る感受性、その変化に対応する心の柔軟性をこれからも磨いていってください。皆さんがこれから、どのように成長をされていくのか楽しみにしています。そして、新たなる人生の第一歩を、笑顔で踏み出してください。
 最後になりますが、卒業される皆さんの輝かしい未来と東京大学教育学部附属中等教育学校の発展を祈念し、お祝いの言葉とさせて頂きます。
 PTA会長 田口紀子