2024年10月11日
4月8日(月曜日)に、令和6年度入学式を挙行しました。学校長、東京大学副学長・理事、東京大学教育学研究科長よりごあいさつをいただきました。在校生代表の歓迎の言葉の後、新入生の力強いあいさつには、学校生活への大きな期待が込められていました。
当日は雨天の心配もありましたが、時折の日差しもあり、満開の桜が新入生をお祝いしているかのようでした。79回生の新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。皆様の今後の活躍を期待します。
学校長のことば
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。 保護者の皆様におかれましても、本日はお子様のご入学、まことにおめでとうございます。 また、ご来賓の皆様におかれましても、ご多忙の中、ご列席を賜り、ありがとうございました。 私ども教職員も、本日、新入生の皆さんをお迎えすることを心待ちにしておりました。 おそらく、新入生の皆さんは期待と不安の入り混じった感覚の中で、本日を迎えていることとお察しします。皆さんに、私ども中等教育学校にお迎えするにあたって、大切にしてほしいことを、本日は二つにしぼってお話します。 私が学んでいる学問の一つに、障害学という、障碍者の生活について研究する学問があります。そのなかでは「自立」が重要なテーマの一つです。自立といえば、身辺的なことが一人でできるとか、経済的に職業を得て一人で生活ができるようになるといったことが想像されますよね。でも、そう定義すると、24時間介護された寝たきりの障碍者の方は、生涯にわたって自立ができないということになりかねません。では、自分たちは不完全なままに人生を終えるのかという問いが生まれ、自立という言葉のとらえなおしが50年前ぐらいから始まりました。 そのなかの一つは、自立というのは、失敗の可能性のある事柄に挑戦できることだという定義があります。障碍者のために健常者が最もいいことを判断してあげるのだということであれば、障碍者は失敗もできなくなってしまいます。そうじゃないだろうと。失敗できてこそ、一人前の人間として扱われたことだという話になりました。いま、子供たちに対しても、失敗しないように、保護者や教師がすべてお膳立てしてしまうということが世間では多く起きています。私たち附属中等教育学校では、皆さんが失敗しながら、その失敗から学んでいくプロセスを非常に大事にした教育を展開しています。ぜひ、みなさんも失敗を恐れず、様々な挑戦をし、その失敗から安心して学んでいくというプロセスを楽しんでいただきたいと思います。 もう一つは、友達や保護者の皆さん、教職員に依存する、安心して頼るということです。東京大学の先端研の熊谷晋一郎先生が、「障碍者」は依存先が肉親とかに集中しがちで、自立とは依存先、頼れる先を増やすことだと定義しています。ぜひ、皆さんも、6年間かけて自立するなかで、いろいろな人に安心して頼れるという体験を積み重ねていただきたいと思います。120人の同級生、そして720人の生徒、××人の教職員、さらに、東京大学には3000人をこえる教授・准教授がいます。これらの人に様々に相談するプロセスに皆さんの自立、成長あるだろうと思います。同時に、6年間には、ときに悩んだり、どうしてよいかわからないことにぶつかることもあるだろうと思います。そのようなときは、ぜひ、話しやすい友達に、そして教師に相談してください。必ずしも担任や学年の先生だけでなく、話しやすい先生でかまいません。保護者の皆様も、ご不安なことがおありであれば、ぜひ話しやすい教師に、ご相談ください。しんどいことを一人で抱えて悩むのではなく、私たちにも一緒に悩ませていただきたいと思います。 皆さんが安心して「自立」に向かって過ごせる環境を、教職員一同、一生懸命充実させていきたいと考えていることをお伝えし、祝辞とさせていただきます。 改めて、本日はおめでとうございます。 |
お祝いのことば
入学式 祝辞 東京大学理事・副学長の森山工です。新入生のみなさん、東京大学教育学部附属中等教育学校へのご入学、おめでとうございます。保護者・ご家族のみなさまにも併せてお祝いを申し上げます。 いま、世界には人類全体で力を合わせて解決していかなければならない課題が沢山あります。そのなかで、みなさんの記憶にも新しいのが、新型コロナウイルス感染症ではないでしょうか。本日の入学式は、この感染症が季節性インフルエンザなどと同じ「5類感染症」に移行したのち、初めての入学式です。みなさんの入学のお祝いに加えて、ここにつどったみなさんが、そして保護者・ご家族のみなさまが、厳しい生活環境と学習環境を乗り越えてこられたことを称えたいと思います。 その一方で、改めて世界に目を向けてみましょう。国際紛争や地域紛争は世界の各地で頻発し、かつ長期化しています。日本国内だけでなく、世界的に見ても自然災害に見舞われる地域は多く、各地で被災地復興への取り組みが求められています。さらには、資源・物資・物流の価格上昇などもあります。このように、わたしたちが向き合うべき課題は数多く存在しています。 そうしたなかで、わたしたちは課題への解決方法を考えてゆかなければなりません。そのためには、なによりもわたしたちが、未来に希望を抱くことが必要です。そして、わたしたちが未来に希望を抱くためには、自分が一人だけで存在しているのではないという自覚が必要です。自分は一人だけでなく、他の人々と「ともにある」という自覚が必要です。未来への希望は、自分がほかの人々と関係をもちながら、自分一人を超えたところに、自分を含む「人々」がいるという気づきによってもたらされるのです。「人類」というのは、そのような「人々」のもっとも大きな集まりであるといえます。 けれども、「人類」について実感をもって考えるというのはやさしいことではありません。だからこそ、みなさんは、そしてわたしたちは、自分の身近なところに立って、けれども自分だけに閉じこもるのでなく、自分をそのときどきの他の人々との関係のなかで捉えるのでなければなりません。いいかえると、みなさんには、そしてわたしたちには、自分をそのときどきの他の人々との関係のなかで捉えるという「想像力」が必要なのです。 たとえば、わたしたちが日常で用いるシャープペンシル一本が、どれほど多くの人々の関与でなりたっているのか。少し思いを馳せてみましょう。わたしたちが毎日食べる食材の一つひとつが、どれほど多くの人々の関与で食卓まで届けられているのか。少し思いを馳せてみましょう。そのように思いを馳せれば、みなさんは好むと好まざるとにかかわらず、自分は他の人々と無関係ではいない、いえ、無関係では「いられない」、ということに思いいたるはずです。 そのような、他の人々に対する「想像力」を培いましょう。そして、他の人々と「ともにある」自分に対する「想像力」を培いましょう。そのためには、自分の身近な現場から、その現場をともにする仲間たちと励まし合い、刺激し合いながら学んでいくことがなにより大切です。そうした学びの上にこそ、他の人々に対する「想像力」が開花し、未来への希望が導かれると考えられるからです。そして、この附属中等教育学校には、そのための学びの環境がととのっているのです。 今日からはみなさんも、附属中等教育学校の一員です。どうか興味の範囲を広くもって、勉強だけでなく、行事や部活動にも、力いっぱい取り組んでください。さまざまな人とふれあい、ことばを交わしてみてください。「対話」を通じて、お互いの理解を深め、お互いにつながってゆくことが、いまの時代にはいっそう求められています。 みなさんの豊かな学びが、明日の日本を、ひいては明日の世界を開いてゆく力になることを切に願いまして、わたしからのお祝いのことばといたします。 ご入学、誠におめでとうございます。 東京大学理事・副学長 森山 工 |
令和6年度新入生の皆様、東京大学教育学部附属中等教育学校へのご入学おめでとうございます。 コロナ禍を経て、私達は新しい生活様式にもなれ価値観や意識の変化を経験し互いを思いやりながらの生活を過ごしてきました。以前より自分らしさを大切にする時代になったのではないでしょうか。 東大附属はとても規則の少ない学校です。 それはいろいろなことを皆さんが自分たちで考え、決められるようにするためであり、何でも好き勝手にしていいという意味ではありません。 自分たちで目標を決め、そのために必要なルールや協同生活を、自分たちの手でつくりあげていくということです。 皆さんは自分では想像し得ないような大きな可能性をひとりひとりが持っています。 一生の付き合いになるような友人や、将来につながるような出会いやきっかけが見つかるかもしれません。クライメイトに限らず、先輩や地域の人々など、さまざまな人々と協力しながら自分なりの考えで物事を解決していく、そういった日々の時間の中で自分の得意なことを見つけていってください。 そんな6年間は皆さんにとってかけがえのない素晴らしい財産になることでしょう。 また、授業だけが学びではありません。 「なぜ」を探究する学びがあります。 調べ学習やディスカッション、プレゼンテーションなどのグループワークも活発です。 そんな協働的・探究的な深い学びを通して、変化の激しいこの社会を生き抜くために必要な課題を自ら積極的に見つける知的好奇心を育て、いろいろな違いがあっても互いを尊重し合える寛容な社会や平和な世界を築いていく力を身につけてほしいと思います。 そして保護者の皆様には、心からのお慶びを申し上げます。 つい先日まで小学生だった我が子が一人でやらなければならないことが急に増え、不安に思うことも多々あることでしょう。 私達PTAは生徒たちが安全で楽しい学校生活をおくれるようサポートしていますが、その活動の中で子ども達と共通の話題、共通の感動体験を持ちながらあたたかく成長を見守って下さい。 思春期になる子ども達との接し方に悩んだときには、抱え込まずに周囲の方々に相談して下さい。 PTAの存在がそういうときの頼りになりますよう心を尽くして参ります。 最後になりましたが、東京大学教育学部付属中等教育学校のますますのご発展と、新入生と保護者の皆様が素晴らしい6年間を過ごせますよう、心からお祈り申し上げてお祝いの言葉とさせていただきます。 2024年度東大附属PTA会長 田口紀子 |