Secondary School attached to the Faculty of Education, the University of Tokyo

【行事報告】入学式

 去る4月8日(木)に、令和3年度入学式を挙行しました。お天気にも恵まれ、76回生120名を東大附属の新たな仲間として迎え入れる事が出来ました。これからの皆さんの活躍を期待したいと思います。

入学式 学校長の言葉
 皆さん、ご入学おめでとうございます。保護者の皆様には、心からのお慶びを申し上げます。
 新型コロナウイルスに振り回された大変な一年でした。もちろん、コロナウイルスの脅威はいまだに去ってはおりません。そのような中で皆さんは小学校最後の年を過ごし、決して学びを止めることなくその教育課程を修了し、中等学校への入学の日を迎えました。これまでのご努力に対し、心より敬意を表したいと思います。
 これから皆さんには、本校が重視する主体的、探究的、協働的な学びを通じて大きく成長していただけるものと期待しております。そのための環境は十分に整っていると確信しております。まず、なにより、生徒思いの優秀な教員が揃っています。勉強のことだけでなく、何か困ったことがあったら、誰にでも気軽に相談してください。
 それから、体力づくりのため、この体育館をはじめ、運動施設をご活用ください。東京都心にこれだけ近い場所にこれだけの広さのグラウンドがある学校は他にないと思われます。ここで思う存分体を動かしてください。
 さらに、後ほど東大教育学部長のご祝辞を頂戴しますが、全国の大学附属学校の中でも際立って大学との連携が密であることも、本校の大きな特徴の一つです。本校は、研究実験校という側面も有しているため、東大の教員・大学院生・学部学生が頻繁に来校いたします。とくに教育実習の期間には、多くの実習生が実際に授業を行います。また、一年生の皆さんには、例年であれば、総合学習の一環として「東大探検」という活動に参加していただく機会があります。今年は、コロナの影響もあるので、まだどうなるかはわからないのですが、いずれにしても、メディアなどではとかく特殊なイメージを付与されがちな東大や東大生の真の姿を見ていただけると思います。
 私たちとしては、このほかにも精一杯の環境作りをしておりますが、あくまでその中で成長していくのは皆さんご自身です。自ら学び、そして周りの友達の学びを助ける。みんなでそのような関係を築いていっていただければと思います。私たちも、それを全力で支え、応援します。
 以上、簡単ではございますが、ご挨拶に代えさせていただきます。


2021年4月8日
東京大学教育学部附属中等教育学校長 斎藤兆史


入学式 来賓の祝辞
 教育学部長の小玉です。新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。東京大学教育学部を代表して、こころよりのお祝いと、歓迎の意を表したいと思います。また、ご家族の皆様におかれましても、このたびは誠におめでとうございます。
 みなさんはこの東大附属に76回生として迎えられることになります。本校の校長先生は代々教育学部の教授がつとめており、私自身も、斎藤校長の3代前に校長を務めたことがありました。また、みなさんには、教育学部の図書館を東大の学生と同じように利用する権利が与えられており、さらに、総長をはじめ、東京大学の先生が特別授業を行う機会も用意されています。その意味で、皆さんは今日から東京大学の一員として、6年間を過ごしていくことになります。わたしたち東京大学教育学部のスタッフも皆さんの学習と研究をサポートしてまいりますので、思うぞんぶん東大の知的な資源を活用していってほしいと思っています。
 さて、昨年から今年にかけて、新型コロナウイルスの感染は世界中に拡大し、私たちを取り巻く日常の姿を大きく変えました。学校教育でも、対面で行うコミュニケーションの割合が縮小し、オンラインとリモートでのコミュニケーションの割合が拡大しています。この変化は、人と人とのつながりにおいて少なくない不自由と困難をもたらしました。本来するはずだったことができなくなって残念な思いをした人も多かったのではないでしょうか。しかしながら他方で、コロナによる変化は、オンラインを駆使したコミュニケーション手段の活用によって、それまでなしえなかった時間と空間を越えた関係づくりの可能性を開いてもいます。本校でも、大学や他の学校,さらには海外とオンラインでつながった研究交流活動がこれまで以上に活発化しつつあります。東京大学教育学部としても、オンラインの教育環境の充実をはかっていきたいと思っていますので、ぜひそうした環境を存分に活用して、オンラインで東大や世界とつながりながら探究活動を深めていってほしいと思います。
 コロナの時代にあたって注目しておきたいもう一つのポイントがあります。それは、全世界の中高校生がオンラインでつながって、この問題をきっかけとして、学校と社会をめぐるさまざまな問題と正面から向き合い、考え、行動を始めているという点です。私自身、昨年は世界や日本の高校生と議論する場を持ち、子どもや若者が立ち上がり発言し始めていることを実感しています。コロナの感染拡大はこの動きを加速させ、10代の若者たちが社会の中心に位置づく時代になろうとしています。5年前に選挙権年齢が18歳に引き下げられましたが、皆さんが6年生になるときは成年年齢も18歳になっており、皆さんは、本校に在学している間に成人となり、大人としてこの学校を卒業していくことになります。大人になるということは、この世界の中で主権者として、市民として、生きていくということを意味します。東大附属には活発に活動している生徒会や、教員・生徒・保護者が一堂に会して話し合いをする「三者協議会」など、自治と民主主義を実践する組織があり、前期課程での服装の自由化もそうした自治的活動を通じて策定されていったと聞いています。
 自治や民主主義といっても今ひとつイメージが湧かないという人には、本校の先輩たちの姿を観察してみることをおすすめします。小学校とはまったく異なる中等教育学校の雰囲気というものを、先輩たちの姿から感じ取ることができるのではないかと思います。そのなかに、4年後、5年後の自分を見つけ、自分が大人になって社会や政治に参加していくということのイメージをぜひつくっていって下さい。
 いま世界では、香港やミャンマーなどで民主化を求める若者の活動がある一方、それを阻害する動きも強まるなど、実は民主主義を守り育てるという課題には一筋縄ではいかない難しさもあり、そのような難しさを体感する上でも、東大附属での民主主義と自治の仕組みに積極的に関わることは大変重要な意味を持ちます。本校での6年間が、皆さんにとって、主権者として、市民として自立していく有意義な6年間になることを希望して、私からの祝辞としたいと思います。


2021年4月8日
東京大学教育学部長 小玉重夫